本を読むようになったきっかけは?

朝早くから店の電話が鳴りました。
「選書してほしくてお店に行こうと思うのですが、今日、こんぶ店長はいらっしゃいますか」
関東にお住まいの方、神戸出張のついでに立ち寄りたいとのことでした。幸いこの日は一日店にいました。予定通りご来店され、当店のことを知った経緯、仕事のこと、どんな本を読みたいか、聞かせていただきました。本を読む習慣があり、本はたくさん読んでこられとのこと。しかし高校や大学で生徒に本の紹介をしてもあまり反応がないらしく、「どうしたら読んでもらえるか」お話しました。
ここからは僕が実際に話したことです。
読書の啓蒙、僕もずっとやってきましたが、何をしたら必ず読んでくれるという鉄板のものがありません。しかし当店に来る本好きの高校生や大学生に本を読むようになったきっかけを聞いたら、だいたいこう答えますよ。「親が本好きだから」って。家に本棚があってたくさん本がある。本を読むことが日常である。本なら何でも買ってくれた、という子が多いです。二番目に多いのは、「先生に本を薦めてもらった」「読んだらおもしろかった」という子たち。授業中クラス全員に紹介した本ではないんです。授業に必要な本でもありません。先生から自分だけに(個人的に)すすめてもらったと言います。中にはプレゼントしてもらったという子もいます。
先生がすすめた本を読んだだけでもすごい事ですよね。1冊読んで終わらず、また次のおすすめを教えてもらったり、感想を伝えたりして、先生と生徒の信頼関係が伺えるのでそこに感動します。最近もこんなことがありました。中学時代に先生から喜多川泰さんの本をすすめてもらったことがきっかけで本を読むようになったという大学生、中学から本を読み続けたそうです。しかし段々と答えがすぐみつかるような本ばかり買うようになったそうです。合理的、効率重視の自分に気づいて、これではいけないと思って、自分で考えること、自分で答えをみつけること、答えがないものにも向き合うこと、無駄なことをやってみようと思って当店にたどり着いたんです。僕が30代40代の時に考えてたことをその子は大学でもうわかってるんです。今の大学生ってみんなしっかりしてるんでしょうかね。そして聞いてはいけないと思いつつ聞いてしまった。
「中学のとき、本をすすめてくれた先生の名前は?」って。
そうしたら「F先生」って。
F先生、またかっ!この先生の教え子が今まで何人も来ました。本を読むようになったきっかけを聞いたら、F先生って言うんですよ。すごくないですか!F先生は、ここ(本屋)にも来るんです。学校にも何度か本を送ってますが、自分が読む本というよりは生徒にプレゼントする本が多いです。その学校には何人もそういう先生がいて、度々、感動するようなエピソードが起きるんです。学校名を出してブログにも書かせていただきましたから、明かしますけど、京都の立命館宇治中学です。
すると、お客様が悲鳴を上げました。娘さんが立命館宇治に通っていたそうです。卒業生とのこと。「うちの娘の担任はK先生っていって、ものすごく熱心で素晴らしい人でした。私も娘も大好きだったんです。まさか、店長が立命館宇治の先生とつながっていたとは」
僕はK先生にも本を送っていました。留学コースの担当をされていて、海外に行く前に必ず喜多川泰さんのライフトラベラーを読ませていました。
「うちの娘、それで読んだのです。娘の喜多川泰さんの本が大好きなんです」
東京からお越しのお客様です。まさか娘さんが京都の学校に通っていたとは。しかも僕もお世話になっている立命館宇治中学だとは驚きました。こういうことがよく起きる、立命館宇治という名前がよく出てきます。10月25日にもブログで学校のことを書いたところです。立命館宇治中学高等学校、なんて素晴らしい学校なのでしょう。もしもドラえもんがいたら何出してもらう?そんなレベルことを言いますが、もし僕が小学生からやり直すとしたらぜったいに立命館宇治中学を受験する。受かるかどうかわかりません(笑)、でも行きたい学校があるだけでも幸せなことです。
生徒に本をすすめる先生がたくさにらっしゃいますから、またこういうことがあると思います。先生からしたら当たり前のことと思っているはずです。「僕がおすすめした本をきっかけに生徒が読書好きになった」と言うことはないと思います。代わりに僕が公開します。親でもわが子に本を読ますってなかなかできないことですから。そしてその後の人生に大きく影響を与えておられるのですから、このようなお話はもれなく書かせていただきます。
長文おつきあいいただきありがとうございました。こんぶ店長

